シン・狭山茶 イメージ画像

「味」のシンソウ

狭山茶をめぐる、
プロフェッショナルの証言

「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」
狭山茶作り唄にも謳われるように、
「味」が高く評価される狭山茶。
立場の異なるプロフェッショナルたちの証言から、
その真相に迫る──。

「味」をつくるプロの証言 永世茶聖・中島毅

なぜ狭山茶は、「味」が高く評価されるのか?

まずこの土地の自然環境にあると思います。夏はとても暑く、冬はマイナス15℃前後にもなる厳しい寒さ。この寒暖差によって茶樹は強く鍛えられ、葉は大きく、自然と厚みを増していきます。

こうした環境を耐え忍んだ茶樹から育つ新芽は、養分をしっかりと蓄えた肉厚な芽になります。その新芽を十分に揉み込むことにより、狭山茶特有の濃厚さや深みが生まれます。これが「味の狭山茶」と呼ばれてきた大きな理由だと感じています。

また、狭山茶は他産地に比べて収穫回数が少なく、茶樹をじっくりと充実させる期間が長いことも、味の評価につながっていると思います。

さらに狭山茶では、自園・自製・自販という形で生産から販売まで一貫して行う農家が多く、お客様との距離が非常に近い。お客様の声を直接受け止めながら、その時代に求められる味へと磨き続けています。

機械を一切使わず作り上げる「手揉み茶」をはじめ、品評会で培われてきた技術と感性を大切にしながら、人から人へと受け継がれてきた積み重ねこそが、狭山茶の味を支えているのだと思います。

1979年生まれ。埼玉県入間市出身。
大西園製茶工場14代目。全国手もみ茶品評会では8回の日本一(農林水産大臣賞)を受賞。この実績に対して同振興会から最高位の称号「永世茶聖」を日本で初めて授与される。全国手もみ振興会認定十段。日本茶インストラクター。

「大西園製茶工場」公式サイト

「味」を伝えるプロの証言 狭山お茶育研究会

なぜ狭山茶は、「味」が高く評価されるのか?

狭山茶は、独特の濃さと深いコクを持った、しっかりとした味わいが特徴です。茶葉が細かい「深蒸し茶」が主流ですが、短時間でさっと淹れてもおいしく、何煎も楽しめる、親しみやすいお茶と言えるでしょう。飲み手からは「パンチがある」「癖になる」といった声もあり、実際、狭山茶を飲み慣れてしまうと、他の産地のお茶では物足りなさを感じる、という話さえ聞かれます。

こうした味わいの背景には、受け継がれる伝統技術と産地の特性があると考えます。「茶の味は蒸しで決まる」とも言われ、甘みとほどよい苦渋味のバランスが大切にされてきました。また、自園・自製・自販の生産者が多く、茶園ごとの個性が味に反映されている点も、狭山茶ならではの魅力です。煎茶に限らず、紅茶や烏龍茶、そして萎凋(いちょう)茶や手揉み茶など、多種多様な味わいを高い品質で楽しめることも特徴だと思います。

教育現場での活動をはじめ、さまざまな場で狭山茶を伝えていく中で感じるのは、その味がどの年代にも素直に評価されるということです。おいしさにふれ、土地の話や作り手の思いを知ることで、より深く心に残っていく。実際に茶園やお店を巡り、自分の「推し茶」を見つけ、ファンとして応援していく方の姿も多く見られます。

狭山茶は、長い歴史と技術に支えられながら、今もなお進化を続けています。まだ知られていない魅力も多く、その伸びしろこそが、これからの評価をさらに高めていくと考えています。

埼玉県の特産品である「狭山茶」を使った体験型の「お茶育授業」を行う団体。日本茶インストラクター協会認定資格を持った経験豊かな講師陣をはじめ、栄養士・調理師・食育インストラクターなど、食育知識豊富なプロフェッショナルが集まり、「急須で淹れる茶のおいしさ」を今の時代に伝えている。

「狭山お茶育研究会」公式サイト

「味」を引き出すプロの証言 パティシエ・江上敏和

なぜ狭山茶は、「味」が高く評価されるのか?

狭山茶をスイーツに使うようになったきっかけは、同じ所沢市内のお茶屋さんとの出会いでした。そのお茶屋さんのお茶を使ってお菓子を作れないかと考え、試作を始めたのが最初です。お茶を煮出して使う方法では味が薄くなったり水分量の調整が難しかったのですが、粉末にする機械を導入していただいたことで、素材として非常に扱いやすくなりました。

実際に使い始めて感じたのは、狭山茶は味がしっかりしていて、苦味や香ばしさがはっきりしているということです。当店では大人向けのスイーツを多く扱っていますが、その方向性ととても相性が良い素材だと感じました。試作を重ねるうちに、ケーキやクッキーなどの焼菓子を中心に、ほぼすべての商品で「狭山茶味」のバリエーションが作れると感じるようになりました。

完成したスイーツの中で、狭山茶は味の軸をつくる役割を果たしています。風味が良く、苦味もしっかりしているため、甘さだけが前に出てしまうことがありません。お茶の存在感があることで、後味が締まり、全体のバランスが取りやすくなる。香りも残りやすく、「お茶を使ったお菓子」であることが、はっきり伝わる点が大きな強みだと思います。

実際にお客様からも、「お茶の味をしっかり感じる」という反応をいただくことが多くあります。狭山茶の味の強さは、当店のコンセプトともよく合っており、今後もバリエーションを増やしながら、販売の幅を広げていきたいと考えています。地産地消の一助になると同時に、狭山茶の魅力を伝えるきっかけになればうれしいですね。

2015年5月、埼玉県所沢市に「Patisserie La Liberte(ラ リベルテ)」を開業。日本語で「自由」という店名のままに、洋菓子業界の常識にとらわれず、様々ことにことにチャレンジ。地元・所沢産の狭山茶を使用したスイーツは、「所沢ブランド特産品」に認定されている。

「Patisserie La Liberte(ラ リベルテ)」公式サイト

「味」を解き明かすプロの証言 東京家政大学・井上宮雄

なぜ狭山茶は、「味」が高く評価されるのか?

狭山茶の味が高く評価されてきた背景には、まず産地の自然環境が大きく関わっていると考えています。狭山は日本の大規模な茶産地としては北限に位置する地域であり、寒冷な気候の中で茶樹が育つことで、葉が厚く、テアニンやカテキンなどの成分が濃厚に含まれる特性があります。また、他の産地が年三回の収穫を行うのに対し、狭山では年二回しか収穫を行わないため、茶樹をじっくりと充実させる期間が長く、これも味の濃厚さにつながっていると考えられます。

私たちの研究では、日本三大茶の成分を科学的に比較分析しました。その結果、狭山茶は静岡茶や宇治茶と比べて、総カテキン量が最も多いことが明らかになりました。カテキン類は渋味をもたらす成分であり、同時に抗肥満作用や抗腫瘍作用、抗菌・抗ウイルス作用など、優れた生理活性を持つ中心的な成分でもあります。また、狭山茶は全糖量も三大茶の中で最も多いという結果が得られました。糖類、特に緑茶に含まれる複合多糖類のペクチンは、カテキンの渋味を緩和する働きがあることが知られています。つまり、狭山茶はカテキンによる高い健康効果を持ちながら、糖類によってその渋味が適度に抑えられ、濃厚でありながらバランスの取れた味わいを実現していると言えます。

「狭山茶は味で語られてきた」という評価を考えると、これは科学的な裏付けのある評価だと捉えています。狭山茶の生産地では「自園・自製・自販」という一貫した生産システムが特徴的で、生産者がお客様の声を直接受け止めながら、時代に求められる味へと磨き続けてきた歴史があります。この積み重ねられた技術と、成分的な特性が相まって、狭山茶独特の味わいが確立されてきたのだと考えています。

1997年、東京工業大学大学院総合理工学研究科化学環境工学博士後期課程修了。2006年より東京家政大学の講師として勤務。現在は同大学の環境共生学科准教授。専門分野は無機化学、環境化学。著書に「生活と環境(宣協社)」、「廃棄物の処理と利用の化学(宣協社)」などがある。

「東京家政大学」公式サイト

  • concept

    旅で出会う、
    埼玉のお茶「狭山茶」

    狭山茶は「飲む」以外の楽しみ方もたくさんあることを知っていますか?
    埼玉県に足を運んで、見て、食べて、香りに包まれて…
    新しい狭山茶の魅力を大公開!!
    「シン・狭山茶」の魅力を発見する旅へ出かけましょう。

    CONCEPT MOVIE
  • interview

    狭山茶とは

    「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」と謳われる「狭山茶」。
    首都圏から一番近い茶どころでありながら、その魅力について詳しく知る人は多くないです。

    そこで、日本茶インストラクターとして企業やイベントなどでお茶の講師を務めている、老舗茶園「宮野園」の茶匠 宮野圭司さんに狭山茶の魅力を聞きました。

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